2022年5月3日、兵庫県の日本海から瀬戸内海まで走る大会が開催されました。
大会名は「拝啓 加藤文太郎 兵庫縦断176Kスピードハイク」。
私がエントリーしたのは2年前、2020年でしたが、その年から感染症流行による緊急事態宣言の発令などが続き、2年たった今年、ついに開催されることになりました。
これまで数々のウルトラマラソンを走ってきて、萩往還250kmをはじめ、100kmを超える大会に何度も参加しているとはいえ、最近は仕事の多忙さとそれに伴う疲労の蓄積であまり走れていない不安がありました。
とはいえ、制限時間が48時間だし、まあ大丈夫だろうとは思ってました。
結果は130kmでリタイアしました😢。
本当はスタートからゴールまでの完走記を書きたかったのですが、残念ながら130kmまでのリタイア記となりました。
完走はなりませんでしたが、万全には程遠い状態ながらも100km以上走れるまでに体調を整えてスタートラインに立てた自分を褒めてあげます。
1 スタート前
前日は鳥取に宿泊しました。
鳥取からスタート地点の浜坂までは電車で40分程。
鳥取には安いホテルがたくさんあって泊まるには便利です。
当日は朝9時45分の電車に乗り、浜坂駅に10時27分に到着。
山陰線は列車の本数が多くなく、1時間半に1本くらいなので、この電車に乗らないとスタート時刻には間に合いません。
浜坂駅に到着。
ここからスタート地点の浜坂サンビーチまでは歩いて15分程です。
浜坂サンビーチ、スタート地点です。
この海岸でスタート前の腹ごしらえをしようと買ってきたおにぎりを食べている時に事件が起こりました。
なんと、トンビが私が手に持っていたおにぎりを見事にかっさらっていったのです。
以前にユーチューブでトンビが子どもが食べていたパンを横取りする動画を見たことがあったので「ああ、これか」と納得しました。
おにぎりを二つ持っていて、一個目は食べることができたのですが、二個目を食べようとしたときに事件が起こったのです。
一つ目のおにぎりは海苔を巻いてあって真っ黒だったのですが、二個目は海苔を巻いてない白いおにぎりだったのでトンビに見つかったんじゃないかと推測しています。
なぜか最近その動画を目にしていたので驚かなかったのですが、こういうことが起きることがわかっていたからその動画が目に入ったのかもしれません。
浜坂サンビーチの海岸で何か食べようと考えている方はトンビにご用心を。
必要な装備を20リットルのバックパックに詰めて背負います。
主な装備は、水・食料(途中のコンビニで調達しますが売り切れの場合もあるので予備として)、ヘッデン、フラッシュライト、スマホ、予備電池、モバイルバッテリー、ダウンジャケット、トレッキングポール、ウォークマンなど。
今回は初めてトレッキングポールを持参しました。
最近、長距離のトレイルなどでトレッキングポールを使用しているランナーを多く見かけるようになり、最後に高取山の登りがあることや後半脚が持たなくなってきたときの支えにもなることを考えて試してみることにしました。
チェックポイントではスマホでQRコードを読み取りますし、コース図もスマホに入れているため、バッテリー切れを心配してモバイルバッテリーは二つ用意しました。
装備はかなり重くなり、このことが脚へのダメージを大きくしたと思います。
トレッキングポールは軽量のものを選びましたが、それでも2本で250gあり、モバイルバッテリーも結構重く、結果的にはトレッキングポールは不要でモバイルバッテリーも一個でよかったんじゃないかと思います。
これはあくまで結果論ですが。
2 浜坂~村岡(ST~第1CP)
スタート時刻は正午。
スタート前に全員で集合写真を撮り、50人ほどのランナーが順次スタートしていきます。
コースは分かれ道が多くてわかりにくいので地図を確認しながら走ります。
スタート直後は前のランナーについていきますが、1時間も走った頃にはほぼ一人での走りになっていました。
コースを事前にグーグルマップで予習していたので、ある程度は道がわかりましたが、それでもどっちに進んでいいかわからなることが多く、実際、2回ルートから外れていることに気づいた場面がありました。
道の駅浜坂の郷を通過。
コース上にはいくつもの道の駅があり飲み物や食べ物の補給が可能です。
湯村温泉の温泉街を進みます。
私の頭の中では湯村温泉と言えば夢千代日記です。
昔、NHKのドラマで両親が見ていて、なんか怖そうなドラマだなと思って眺めていた記憶があります。
湯村温泉を抜けると峠道に入りますが、その手前で温泉街の人たちが但馬牛と浜坂ちくわの鉄板焼きを振るまってくれました。
これから山に入ろうという手前でエネルギーのあるものを口にできたのはありがたかったです。
とってもおいしかったです。
ここから柤岡(けびおか)へ峠道の上りが始まります。
まだまだ元気いっぱいですが、背中の荷物はやっぱり重いし、走り込みができていないせいでしょう、自分の走りに以前のような力強さが感じられません。
上りが得意な私は以前ならもっとパワフルな走りができていたはず。
それでもやるしかありません。
はるか彼方のゴール目指して進むだけです。
あと100マイルって・・・。
そう、あと100マイル走るんですね。
湯村カンツリークラブに到着。
ここにはエイドステーションがあります。
トイレもあります。
食べ物と飲み物をいただいてここから下り坂に入ります。
良く晴れて空の青さと山の新緑が美しい。
コースは柤大池へと下っていきます。
柤大池公園を通過。
桜が散り始めています。
コースは柤岡集落へと進んでいきます。
ここからどんどん下っていきます。
脚のダメージを少なくしようとゆっくり目に下りを走りました。
27km地点、第1チェックポイントのローソン香美町和田店に到着。
スタートから5時間が経過。
壁に貼ってあるチェックポイントのバーコードをスマホで読み取り通過報告をします。
3 村岡~生野(第1CP~第2CP)
チェックポイントを出てすぐの入江トンネルは進行方向に向かって左側車線の歩道が広いので、そのまま道の左側を進みます。
入江トンネルを抜けるとすぐに村岡トンネルです。
村岡トンネルは歩道の幅が狭く、横をトラックがスピードを落とさずに通過することもあるので、慎重に歩きます。
トンネルの回避ルートは存在するのですが、今は通れないということで、トンネルを通って進みます。
ヘッドランプを点灯し、背中には点滅灯をつけてなるべく目立つようにします。
村岡商店街を抜けるころにはすっかり日が暮れかかっています。
日が沈み、これから夜に入ります。
慣れないうちは夜通し走るというのは怖さがありましたが、徹夜で走る大会に数多く出ていると、夜中に走るのが平気になりました。
それでも、人の体は元来日中に活動するようにできているせいか、夜中のパフォーマンスは昼間に比べると落ちます。
それに、夜は道路上にある障害物に気づかず転倒したり、中には側溝に落ちたという人もいるので、ペースを落として用心しながら走る必要があります。
私も一昨年、暗い中を走っている時に道路の割れ目に足がはまって転倒、全治3週間のけがをした経験があります。
但馬トンネルを抜け、ループ橋を迂回しながら進んでいきます。
但馬トンネルは全長1250m、広くはない道路端の歩行者が歩くことのできる部分を慎重に進みます。
途中で何ヶ所か水が出ていて車道に降りざるを得ない部分があり、車に気を付けながら歩きます。
写真がぼけていてすみません。
47km地点、第2チェックポイントのローソン 養父万久里店に到着。
スタートから約9時間経過しています。
4 養父~生野(第2CP~第3CP)
ここから38km先まではコンビニがない「コンビニ砂漠地帯」と呼ばれる区間に入ります。
しっかり補給したいところでしたが、あいにくおにぎりの棚は空っぽです。
サンドイッチとパンはいくつか残っていたのでサンドイッチを買って食べました。
コンビニというのは、時間帯によっては弁当やおにぎりなどが何もないということがあります。
だから、コンビニの食糧だけをあてにするのは非常に危険なので、こういう大会に参加する時はあらかじめ補給食を用意しておく必要があります。
朝来トンネルを抜けます。
ここから先は村岡トンネルや但馬トンネルのような交通量が多いうえに歩道が狭いという危険なトンネルはなく、この写真のように広い歩道があって安心して走れます。
この先、次のチェックポイントまでコンビニはありませんが、自動販売機は何ヶ所かあり、飲み物の補給は可能です。
65km過ぎくらいのところで、ランナーのための臨時店舗を出してくれている方がいました。
70km地点の斎神社のエイドでは、カップラーメンやパンなどを用意してくれてました。
しかし、この時点ではかなり衰弱していて食欲がなかったので、小さなパンを一つだけ食べて出発しました。
夜中に衰弱してあまり食べられないということはよくあるので、朝になれば復活することを期待しながらゴール目指して進んでいきます。
脚に力が入らなくなってきて、ペースが落ちていきます。
やっぱり荷物が重すぎたって考えてしまいます。
不調の原因は荷物の重さでないことはわかっています。
山を登る時なんて、この3倍の荷物を背負ってても問題ないのですから、問題はそこじゃないはずなのですが、一度気になりだしたらずっと気になってしまいます。
一歩一歩、確実に進んでいきます。
そして、朝がやってきます。
86km地点、第3チェックポイントのローソン生野インター店に到着。
スタートから既に18時間が経過しています。
5 生野~福崎(第3CP~第4CP)
ここからの上りで初めてトレッキングポールを使用しました。
上り坂でポールを使うと脚への負担が多少軽くなります。
せっかく持ってきたんだから序盤の急坂から使ってもよかったんじゃないかという気もしますが、手がふさがれるので地図を見ながら進めないというデメリットもあり、どっちが良かったのかは疑問です。
トレッキングポールなしでもっと荷物を軽量化するのが最善だったんじゃないかという気が・・・。
やっぱり荷物の重さか・・・。
いや、そこじゃないって。
生野峠を越えます。
ここから先、写真を撮っていません。
暑さによる消耗と足の痛みでもうボロボロ、写真を取ることも考えず、とにかく少しずつでも進み続けることだけを考えることにしました。
今のペースを頭の中で計算すると、制限時間内にゴールまでたどり着けない。
それでも、体の状態が回復することもあり得るので、あきらめずにゴールを目指します。
ここから先は比較的町がある場所になるので、自動販売機を見つけるのに苦労することもなく、飲み物の確保は大丈夫そうです。
ここで、一つのミスに気づきました。
持っていたサングラスは度付きのもので、もう一個の度が入ってないものの方が太陽光をさえぎる効果が高くて、そっちを持ってきたつもりが間違ってることに気づきました。
文字を読むには度が入ったサングラスが必要ですが、走る分には度がなくても大丈夫なのですが、違う方を持って来てしまった・・・。
光をさえぎる効果が高い方が疲労も少なくて済むんじゃないか、失敗したな、そんなことを考えながら進みます。
トレッキングポールを使うと両手がふさがれるので、地図を見ながらのルート確認をおろそかにしがち。
立ち止まって地図を見るとその分時間をロスしてします。
ただし、ポールがあると手の力を使えるので足のダメージは軽減できる。
どっちがいいのかな。
幹線道路はどうしても側溝にふたをしたコンクリートの上を進むことが多くなります。
そうすると穴が開いてるので、ポールを穴にはめないように進まなければいけない。
そんなに気を使うならポールがない方がいいんじゃないか、でも一度使い始めるとポールがないと体を支えきれない気がして手放せない・・・。
実際、一度ポールを穴にはめてしまい、先っぽのゴムを失ってしまいました。
荷物がもっと軽ければポールなしで良かったんじゃないか・・・。
やっぱりそこかい、そうじゃないと思う。
少し脱水状態になり始め、ガス欠状態にもなってきます。
水分補給のために持っていた緑茶を体が受付けてくれません。
衰弱してくると水が飲めなくなりますが緑茶なら飲めるというのがいつものパターンなのですが、なんだか緑茶も体が受け付けません。
試しに麦茶を飲んでみると、問題なく飲めます。
いつもは麦茶が水と同じように飲めなくなって、緑茶なら飲めるのに、今日はいったいどうしたのだろう。
とにかく、麦茶があってよかったです。
そして、ガス欠問題。
燃費のいい体質で、ほとんど食べなくても100kmくらい走れる人だったはずなのですが、予備に持っていた食料をほぼ食べつくしても腹が減って力が出ない状態。
だからといって、無理に食べても吐きそうだし。
これ、ほんとにヤバイ。
まさか、例の感染症の影響で体質が変わってしまったとか・・・。
まさか、そんなことはないだろう・・・。
などと考えながらとにかくゆっくりながらも進み続けます。
110km地点、第4チェックポイントのセブンイレブン福崎井ノ口店に到着。
スタートからここまでの所要時間は約26時間。
6 福崎~小野(第4CP~第5CP)
残り66km。
時速3kmで進めば制限時間に間に合うわけですが、もはや1時間に3km以上進むことができなくなっています。
なぜここまで足が動かなくなっているのか、不思議で仕方ありません。
3年前、165kmの大会に出た時、最後の40kmは足を一歩前に出すだけで激痛が走るような状態でしたが、それでも時速3kmで進むことができ、制限時間内にゴールできました。
あの時と比べたら今の方が元気なのですが、なぜかどう頑張ってもなかなか足が前にでません。
それでも可能性を信じて一歩一歩ゴールを目指します。
加西市に入ってから、道を間違えました。
それほど大きなロスにはなっていないと思いますが、今の状態では20、30分のタイムロスが致命傷になりかねません。
ここまではどっちに向かっているか方向もよくわからない状態だったのが、加西市から先は昔仕事で回っていたエリアなので多少土地勘があることがかえって油断につながったのかもしれません。
地図をしっかり確認せずに感覚で小野方面に向かっていました。
それでも、そういったロスはよくある話、気にせずとにかく制限時間内のゴールを目指すだけです。
太陽が沈んでいきます。
ずっと写真を撮っていなかったのですが、沈む夕陽を目にして、これだけ撮っておこうと思いました。
日が沈み、再びヘッドランプをつけて進みます。
下りに入り、無理やりペースを上げます。
無理してペースをあげてしばらく進むと、足が全く動かなくなりました。
これ以上は無理と判断し、リタイアを決断。
今なら電車に乗って家に帰れるし。
第5CPまでは到達せずにリタイア。
スタートから33時間が経過していました。
7 リタイア後
あとで地図を見ると、リタイアしたのは132km地点、次のチェックポイントまでは2.5kmでした。
ゴールまでは残り44km、ゴールの制限時間まで15時間、時速3kmで進んでギリギリの計算です。
まあ、時速3km(キロ20分)でも進めなくなっている時点でもう終わってる気はします。
今回の敗因は、荷物が重かったこと。
いやいや、そうじゃないでしょう(まだ言ってる)。
練習不足だったこと。
それはありますが、それでもなんとかせねば。
というより、練習ができないほど多忙で疲労がたまっていたというのが問題でした。
とにかく、完走目指して頑張った自分を、130kmまで粘った自分を褒めてあげます。
主催者、スタッフのみなさん、ランナーのみなさん、応援のみなさん、ありがとうございました。
すばらしいチャレンジの機会を得られたことに感謝します。
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